アオギスが泳ぐ干潟に思いを馳せる半世紀前のアオギス竿
日本産キス科の中で最も大きくなるアオギスは、体長40cmほどに育つ。若魚は夏に川を遡るため、「川ギス」とも呼ばれていたという。かつては東京湾を北限として、各地に生息していたが、埋め立てによる生息地の消滅などによりその生息数も激減。現在は、環境省の絶滅危惧種にも指定されている。アオギスは警戒心が強く、船を嫌うことなどから干潟に立てた木製の脚立に乗って釣る「脚立釣り」が、東京湾では江戸時代から盛んに行なわれてきた。シロギスよりも魚体が大きく、引きも強烈ということで人気があったが、東京湾ではアオギスの減少とともに昭和40年代に完全に終わってしまった。これの竿は当社倉庫で大切に保管されてきたアオギス竿。今から50年ほど前、ちょうど東京湾のアオギス釣りが最後を迎えようとしていた時期に作られ、4代目東作が育てた高弟27人衆の中でもその名が知られている東俊作は3本継ぎ。3本継ぎで、竹のカサ付き(ケース付き)。アオギスには「丈一」と呼ばれる一丈一尺(約3.3m)前後のアオギス竿がよく使われたが、東俊作は約3.57mとやや長め。穂先もやや太めで、しっかりとした掛け調子に仕上げられている。東京湾に遠浅の海が続いていた頃、毎年八十八夜を過ぎると、アオギスを求めて釣り人が干潟に押し寄せたという。在りし日のアオギス釣りに思いを馳せてみたい。 |
仕舞寸法は約163cm。1本仕舞い |
|